人工関節センター長 本山 満
変形性関節症や関節リウマチや骨壊死などによって傷つき、 強い疼痛を生じている関節に対して、当院では2008年以降の14年間で1,400件を超える人工関節手術を行ってきました。 高齢人口の増加に伴い手術件数は右肩上がりに増えており、広島県北部地域では最多の人工関節手術件数となっております。さらに2021年5月から人工関節手術専用の手術支援ロボットアームを国内22番目, 広島県では初導入し、最先端のロボット手術が当院で行っており、実績を重ねております。 そこで我々は需要の高い人工関節手術をさらに高レベルに患者様へ提供できるように、専門の医師、看護師、理学療法士、薬剤師、放射線技師、事務スタッフなど多職種を連携させ、意思統一を行うことを目的に人工関節センターを設立することになりました。 今回の決定はこれまでに当院を選んで手術を受けて頂いた1,000名以上の患者様の支援のおかげであり、私は皆様のその想いを繋いでいく決意であります。センター化により患者様の入院や手術に対する不安を軽減させ、術前検査から入院・手術、手術からリハビリ、リハビリ後の完治までの道のりを最短コースで導くことが可能になると考えております。 膝関節部門は本山が、股関節部門は広島大学人工関節講座所属で股関節分野チーフの庄司が責任をもって手術を担当いたします。現在は安芸高田市、三次市、庄原市からの患者様が多いのですが、センター化によってより広域の患者様にも認知していただければ幸いです。 当センターの強みは広島県で初めて導入した人工関節ロボット手術を、コンピューターナビゲーション手術の執刀経験豊富な専門医師が担当することであり、また広島県理学療法士学会で優秀演題賞を受賞したこともあるリサーチマインドを持った優秀なリハビリスタッフ達による理学療法が受けられることであります。このセンター開設により多職種連携が進み、患者様満足度の向上につながることと信じております。
手術実績 人工膝関節手術:1,403件(UKA158件含む)
MakoR Systemは日本で初めて承認された整形外科におけるロボティックアーム手術支援システムで、2017年10月に人工股関節全置換術で、2019年4月に人工膝関節全置換術で薬事承認(保険適用)を取得しています。 人工関節手術にMakoR Systemを用いることによって、人工関節の設置精度や耐久性の向上や疼痛の低減, 患者満足度の向上などのメリットが期待されています。 当院では2021年5月から国内22番目、広島県では初導入となっております。
外科手術では手技の精度、安全性、判断力の3つの要素が高レベルで求められます。当院では2021年5月から人工関節手術専用ロボットMakoを導入しました。これは人間とロボットの能力を組み合わせたハイブリッド手術時代の幕開けとも言える出来事です。 このロボットは人工関節手術における、骨切り(硬い骨を約8mm程度削る)と言われる作業時に主に活用するものです。骨切りは外科医がどんなに職人技を磨いても毎回1mm以内、1度以内の精度を出すのは難しいものですが。Makoではそれが可能になります。 一方で安全性の領域では、人はロボットより安全であり、また経験豊富な外科医は同時に高い判断力を備えています。当院ではロボット手術の前身ともいえるコンピューターナビゲーション手術を600件以上経験した医師が監修するロボット支援手術である点が大きな特徴であり強みと言えます。
手術当日から寝返りを推奨しており、翌日には起立や車いす移乗、手術翌々日には歩行訓練や曲げ伸ばしのリハビリを始めるため、創部治癒を促進、サポートする目的でZip lineを使用(少ない縫合糸でも確実に治すことが可能)。
感染症:術後2ヶ月以内の感染1例, 術後1年以降の遅発性感染2例 (0.2%)
血栓塞栓症:肺塞栓 (0.07%)
出血対策の向上により2014年以降、既往に重症の貧血がある方以外で輸血、自己血輸血ともにしておりません。
様々な機種選択, MRI検査の結果によりますが,希望される方には骨切り手術や靭帯温存手術も可能。 地域包括ケア病棟があり, 高齢や遠方のために, 入院でのリハビリを少し長めに希望される方にも対応可能。
問診、レントゲン検査, 膝の診察後, 手術の必要性を検討し説明いたします。
手術決定後、膝のMRI検査、膝のCT検査、心電図、採血検査、骨密度検査などをルーティンで行います。
既往歴などで循環器系などに問題があれば必要に応じて専門の内科を受診していただきます。
手術中出血量が少ないため自己血貯血は行っておりません。
担当医, 麻酔医より手術に関する詳細な説明を行います。
曜日によって手術室への入室時間が変化しますが、手術は毎日午後に行っております。
手術翌日から車いすに移乗可能で、大半の方が起立も可能です。
個人差はありますが, 手術後3-5週が目標です。
退院後3週を初外来日とし、その後3-4か月ごと、2年目以降は半年に1回、術後外来での経過観察は人工関節の寿命にも関わります。痛みがない場合でもなるべく来院して下さい。
当院には地域包括ケア病棟があり、患者様のニーズに応じて長期リハビリ入院にも対応可能です。 6階病棟(56床)は人工関節だけでなく、内科外科含め急性期の看護を専門にしている病棟です。 3階病棟(50床)は地域包括ケア病棟で、主にリハビリを中心とした看護を専門にしております。 看護師及びスタッフ一同は混合病棟のナースとして幅広い看護の技能を活かして、手術前後の不安や痛みを取り除くように努めております。手術前には入院中の生活、手術前後の経過を入退院支援看護師を中心に、スタッフが丁寧に説明を行います。 当院でのクリニカルパスに準じてお薬、リハビリ、退院するまでの経過を説明いたします。 術前には担当医師から手術に関する説明があり、麻酔担当医師からも麻酔に関する説明があります。 手術後には看護師が出来るだけ痛みなく、快適に過ごしていただけるよう看護を行います。 退院されるまで身の回りのお手伝いを看護師並びに看護補助者が行い、薬剤師による服薬指導にも力をいれております。 当院は年間平均130人程度の人工関節手術を行っていますが、手術を受けられる全ての患者様に関して、医師、看護師、理学療法士が定期的にカンファレンスを行い、手術後の状態をスタッフ全員が共有して一貫した治療を行うように努力しております。 特にリハビリには力を入れており、入院中にリハビリパンフレットをお渡しして、ベッドサイドでの自主訓練を促し、専属の理学療法士がリハビリ指導を毎日行い、また術後定期的にリハビリ状況の評価を行うため、運動テストを実施しています。 担当医師も患者様に合わせた投薬指示、リハビリ指導にあたりますのでご安心下さい。 皆様が毎日笑顔で入院生活を送って頂くことが私達の喜びです。